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少数株主対策なび

全部取得条項付種類株式

全部取得条項付種類株主
スケジュール例

 全部取得条項付種類株式とは、「2種類以上の株式を発行する株式会社が、そのうちの1つの種類の株式の全部を株主総会の特別決議によって取得することができる旨の定款の定めがある種類の株式(171条1項、108条1項7号、309条2項3号)」です。

 全部取得条項付種類株式は、会社法上新たに認められた種類株式の一つであり、発行済みの株式を【取得条項付株式】に変換するのには、当該株主全員の同意が必要になりますが、発行済みの株式を【全部取得条項付種類株式】に変更する場合、株主総会・種類株主総会の特別決議で可能になります。

 全部取得条項付種類株式は、元々、債務超過会社の100%減資を行うことを可能とする事を目的とする制度であったが、会社法制定時において債務超過を要件としないこととなり、また、株式の有償取得も可能であることから、株式取得による企業買収後の残存少数株主のキャッシュ・アウト手法として広く用いられることになりました。

特別支配株主の株主等売渡請求との比較

全部取得条項付種類株式のメリット

  • 90%という議決権保有要件を満たさなくとも利用可能
  • 敵対的な新株予約権者がいる場合で、対象会社が有価証券報告書提出会社である場合には、特別支配株主の株式等売渡請求権による場合、敵対的な新株予約権者による差止請求により、株式の売渡請求部分も含めた全体を差し止められてしまうおそれがあるのに対し、全部取得条項付種類株式はそのようなおそれはない
  • スクイーズ・アウト実施者がスクイーズ・アウトの実施後に存続させたい株主がいる場合には、当該株主の保有株式全体について売渡損益が認識される特別支配株主の株式等売渡請求権とは異なり、端数部分についてのみ売渡損益が認識されるにとどまる
  • 有価証券報告書提出義務を手続上簡易に、スクイーズ・アウトの効力発生後ただちに消滅させることができる
  • 少数株主が争ってきた場合、特別支配株主の株式等売渡請求手続においてはスクイーズ・アウト実施者自身が裁判手続に関与する必要が生じる場合があるなど、スクイーズ・アウト実施者自身に裁判手続の直接的な負担が生じる可能性があるのに対し、全部取得条項付種類株式の場合は基本的に対象会社が裁判手続に関与する

全部取得条項付種類株式のデメリット

  • 端端数処理手続が必要
  • 対象会社の株主総会特別決議および、対象会社の取締役の同意が必要であり、手続に時間が掛かってしまう
  • 任意放棄などが期待出来ず新株予約権を強制的に取得できない
  • スクイーズ・アウト実施者に生じる端数部分について譲渡損益が認識されてしまう
  • 公開買付けに応募した場合、若しくは対価の金額等を争わない場合と比べて、対価の金額等を争う場合には株式が自ら課税関係を選択できる状態になるため、公開買付けに応募せずにスクイーズ・アウトの対価の金銭等を争った場合の課税関係の方が税務上の効率が良い株主が、あえて争う手続をとるといった形で株主の行動にバイアスが生じてしまう可能性がある

株式併合との比較

全部取得条項付種類株式のメリット

  • 有価証券報告書提出義務を手続上簡易に、スクイーズ・アウトの効力発生後ただちに消滅させることができる
  • 26年改正の施行までは全部取得条項付種類株式を用いる手法が圧倒的な主流であったのに対し、株式併合はほとんど使われてこなかった為、26年改正後に株式併合を用いたスクイーズ・アウトの実務が定着するまでは、実例が豊富に存在する全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズ・アウトを選択することが慎重であることも考えられる

全部取得条項付種類株式のデメリット

  • 1株未満問題のリスクを回避しにくいこと
  • 新株予約権をスクイーズ・アウトの効力発生前に処理することができなかった場合のリスクが相対的に大きい
  • 公開買付けに応募した場合、対価の金額等を争わない場合と比べて対価の金額等を争う場合には株主が自らの課税関係を選択出来る状態になる為、公開買付けに応募せずにスクイーズ・アウトの対価の金額等を争った場合の課税関係のほうが税務上の効率が良い株主があえて争う手続をとるといった形で株主の行動にバイアスが生じてしまう可能性
  • 全部取得条項付種類株式の場合には、取得価格決定の申立てを受けた結果、分配可能額を超える金銭を反対株主に交付することとなった場合について、会社法第461条違反であるうとして全部取得自体の効力が向こうであるとの議論がありえる上、会社法第462条第1項第3号に基づく法的責任が生じると解かさせるおそれがある

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2024年12月25日
2024年12月24日

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